少子高齢化がどんどん日本経済に影響を与えております。
特に医療費はこれからもどんどん増加していくと予測されます。
政府もいろいろな対策を打っており、遂に医療法人に公認会計士の監査が義務化されることになりました。
元々助成金が交付されている学校法人に対しては公認会計士の監査が義務化されています。
健康保険組合からの診療報酬で成り立っている医療機関に対しても、診療報酬を公的な資金とみなせば、監査対象となることもやむえないのでしょうか。
監査対象となる医療法人の基準
会社法監査と同様に、一定規模以上の医療法人が監査対象となります。
まず会計監査をするためには、依拠すべき会計基準が必要となります。
その基準として「医療法人会計基準」が設定され、平成29年4月2日以後に開始する会計年度に係る会計について適用されることとなりました。
また以下の基準に該当する場合、会計基準の適用及び外部監査の実施が義務付けられます。
① 医療法人(社会医療法人を除く。)
貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が50億円以上又は損益計算書の事業収益の部に計上した額の合計額が70億円以上であること。
② 社会医療法人
イ 貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が20億円以上又は損益計算書の事業収益の部に計上した額の合計額が10億円以上であること
③ 社会医療法人債を発行していること。
医療法人は3月決算が多いので、上記基準に該当する法人は、平成30年4月1日以後に開始する会計年度からの適用となります。
平成29年4月2日以後に開始する医療法人はもう対策を打っておられるでしょう。
公認会計士等の監査報告書について
じゃあ、公認会計士の監査で何を報告するかというと、監査報告書の内容については以下のようになります。
イ 公認会計士等の監査の方法及びその内容
ロ 財産目録、貸借対照表及び損益計算書が法令に準拠して作成されているかどうかについての意見
ハ ロの意見がないときは、その旨及びその理由
ニ 追記情報
追記情報とは、次の事項その他の事項のうち、公認会計士等の判断に関して説明を付す必要がある事項又は財産目録、貸借対照表及び損益計算書の内容のうち強調する必要がある事項
・正当な理由による会計方針の変更
・重要な偶発事象
・重要な後発事象
ホ 公認会計士等の監査報告書を作成した日
公認会計士監査を義務付けることによって、重要な偶発事象及び重要な後発事象が監査報告書において開示されます。
追記情報への記載は、監査実務において非常に重要な検討事項となり、記載するかしないかは公認会計士側においても常に悩みどころです。
金融機関やリース業者等の外部の利害関係者からすると、追記情報の有無は重要な判断材料となり、融資の姿勢に影響を与えます。
監査を受ける側からすると、追記情報を記載されないように、事前に対策をしなければならないということになります。
健全経営をしており、適切な会計処理を実施していれば、公認会計士の監査を特に気にする必要もありません。
ただ、こんな引当金を計上するの?とかこんな債務を認識しないといけないの?とかいう場面に遭遇することは多々あるでしょう。