全国的に空き家をどうするかという問題がよく話題になっています。政府も調査の一環として共同住宅の空き家について分析を発表しております。
少子化が進んでいるので、空き家は増えていくのは当然なのですが、新聞やネットニュースでも、タイトルには、まず空き家率が高い都道府県をもってきます。そして、文中において空き家の数では都市圏が多いと若干言及するだけです。
空き家率でいくと、直近の調査ではベスト3が山梨県、長野県、和歌山県ですが、そもそも母集団の数が少なく、都市部ほど市場が活発に動いているわけではないので、業界全体の売上に与える影響はそんなに大きくありません。
賃貸用等の空き家数
空き家率ではなく、空き家数でいくと圧倒的に首都圏、そして近畿圏となります。
不動産業界に影響が大きい、賃貸用等空き家の数とその空き家数の全体に対する比率を表にしてみました。クリックすると並び替えができます。
都道府県名 | 総数 | 全国比 |
---|---|---|
北海道 | 233500 | 5.2% |
青森県 | 35100 | 0.8% |
岩手県 | 27600 | 0.6% |
宮城県 | 55800 | 1.3% |
秋田県 | 20500 | 0.5% |
山形県 | 18800 | 0.4% |
福島県 | 36600 | 0.8% |
茨城県 | 95100 | 2.1% |
栃木県 | 72800 | 1.6% |
群馬県 | 64600 | 1.4% |
埼玉県 | 220600 | 5.0% |
千葉県 | 215200 | 4.8% |
東京都 | 645000 | 14.5% |
神奈川県 | 347300 | 7.8% |
新潟県 | 67000 | 1.5% |
富山県 | 22000 | 0.5% |
石川県 | 37800 | 0.8% |
福井県 | 20500 | 0.5% |
山梨県 | 33600 | 0.8% |
長野県 | 57700 | 1.3% |
岐阜県 | 61400 | 1.4% |
静岡県 | 141100 | 3.2% |
愛知県 | 271000 | 6.1% |
三重県 | 52400 | 1.2% |
滋賀県 | 35000 | 0.8% |
京都府 | 89600 | 2.0% |
大阪府 | 444200 | 10.0% |
兵庫県 | 194900 | 4.4% |
奈良県 | 33300 | 0.7% |
和歌山県 | 25000 | 0.6% |
鳥取県 | 13300 | 0.3% |
島根県 | 12900 | 0.3% |
岡山県 | 56700 | 1.3% |
広島県 | 104200 | 2.3% |
山口県 | 43000 | 1.0% |
徳島県 | 21800 | 0.5% |
香川県 | 31200 | 0.7% |
愛媛県 | 45200 | 1.0% |
高知県 | 21700 | 0.5% |
福岡県 | 186700 | 4.2% |
佐賀県 | 15800 | 0.4% |
長崎県 | 38900 | 0.9% |
熊本県 | 48200 | 1.1% |
大分県 | 36900 | 0.8% |
宮崎県 | 25500 | 0.6% |
鹿児島県 | 42400 | 1.0% |
沖縄県 | 35800 | 0.8% |
全 国 | 4455600 | 100.0% |
1位は東京都で全体の14.5%。2位は大阪府で全体の10.0%を占めています。
ちなみに、山梨県は全体の0.8%、長野県は全体の1.3%、和歌山県は全体の0.6%となっております。空き家数でいくと、空き家数、下位23県合計でやっと東京都と同じ数となります。
首都圏の埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県合計では、全国合計の32.1%となります。近畿圏の京都府、大阪府、兵庫県、奈良県合計では、17.1%となります。合計すると49.2%となり全体の半数を占めます。空き家数が圧倒的に多いのは東京都で、首都圏全体だと全国合計の32.1%を占めることは、業界では周知の事実であるとしても、投資用ワンルームのパンフレットにはそんなことは微塵も記載されていません。これからも未来永劫、地方から人の流入は途切れることはないとされています。しかし、首都圏以外に住んでいるとわかるのですが、もはや首都圏に送り出す若者は枯渇していく一方でそのうちいなくなります。地元でのんびり暮らそうと思えば、圧倒的に若者がいなくなってきてるので、選ばなければそれなりに仕事はあります。そして土地もそんなに高くないので、ローンを組んですぐに一戸建てが買えたりします。
何が何でも東京へというインセンティブやメリットがもはや、地方在住者にはありません。どんどん地方から流入してもらわないと困るマスメディア、芸能界(実質東京都にしか存在しない)、もしくはフリーライター、●●評論家というマスメディア周辺で生計を得ている人々は、まだまだメリットを強調しますが、地方在住者には上京する資金も気力も、さらにメリットも、もはや無くなってきているのが実態です。また首都圏と近畿圏に集中している私立大学を中心とした教育業界も、地方から若者が来てもらわないと困る業界ですが、学費の上昇により下宿をしてまで通おうという学生はどんどん減少していき、学生全体に占める地元学生の比率は上昇していく一方です。
どんどん地方から流入してもらわないと困る業界の、マスメディアを通じた懸命な広報活動にも関わらず、先立つものの不足と明確なメリットの不透明さにより、広域異動は減少の一途を辿ります。
よって首都圏においては、埼玉県、千葉県、神奈川県からの東京都への流入、近畿圏においては、兵庫県、奈良県から大阪府への流入が主流となり、400キロを超えるような広域異動は減少していくでしょう。
空き家は都市の問題
空き家率の問題ではなく、空き家数の問題として捉えた場合、また経済的なインパクトを考慮した場合、空き家とは過疎化した地方の問題ではなく、実際は都市の問題となります。
日本の地価の動きというものは、東京都中心部から徐々に波及していきます。最近でこそ、インバウンド需要でスポット的に上昇する地点が北海道や大阪府等で出てきてはいますが、基本的には東京都中心部から上昇していって、徐々に地方都市に波及するという流れになります。したがって、東京都で抜本的な空き家対策が採用され、空き家に対してペナルティ的な課税政策(固定資産税の増税等)が採用されると、売却や差押により、市場への流通量が増加するので、需要不測の現状では地価が下がってしまいます。そしてそれが、全国に波及していきます。
地価が下がると、それに伴い不動産評価額を基準とした税収も下がってしまいます。
よって自分で自分の首を絞めるような空き家に対するペナルティ的な課税政策は当分導入されることもないと予測されるので、これからもどんどん空き家は積みあがっていきます。
最終的に放置された空き家を取り壊すとしてもコストがかかり、行政代執行をしても相手が無資力であれば、税金での補てんとなります。対象となる空き家の数が膨大な都市圏においては、代執行をするにも予算が足りず、結局そのまま放置されるでしょう。行政代執行は実施されたらニュースになるぐらいなので、まれにしか行われません。
やはり、抜本的対策は人口の維持、もしくは増加しかないので、子供ができたら一人1千万円相当の不動産を無償支給するなどの政策をしてくれたら、結婚しようとする若者も増加するのですが、予算が取れないし、選挙でそんなことを公約する政党は高齢者が有権者の大多数を占めているので確実に負けてしまいます。
やはりこのまま縮小していくしかないのでしょうか。
子供のいる身としては、ロシア並みの人口増加政策を取るのであれば大賛成です。