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もしマンションが災害にあったら

災害は忘れたころにやってきます。日本国中、災害に無縁の場所はありません。

もし自分が住んでいるマンションが災害にあったら、どうすればいいのでしょうか?

一部損壊でも、全体としての機能不全を起こす可能性があります。エレベーターが動かないとか、建物の一部が傾いているマンションの一室を買う人はいません。エレベーターの動かないマンションなんて拷問です。現に高齢化の影響でエレベータの付いていない公団型の5階建てマンションの中古価格は下がっていく一方です。もはやエレベーターの有無は資産価値に大きく影響します。

もし、マンションが機能不全になったら、何らかのアクションを区分所有者自身が起こさなければ朽ち果てていく一方です。一か月程度で修繕できる程度の損壊であればいいのですが、再建に半年や一年以上かかったり、住み続けるのに危険が伴う場合はどうすればいいのでしょうか。

icon-check-square 被災マンション法

阪神大震災、東日本大震災の経験から、区分所有建物(マンションのこと)が滅失した場合、多数決でその敷地に建物を再建できることを定めた法律が制定されています(被災マンション法)。

icon-check-square 全部滅失の場合
選択肢  再建 敷地売却
敷地共有者の議決権の5分の4以上の多数決で決議

icon-check-square 大規模一部滅失(災害によって建物の価格の2分の1超が滅失)した場合
選択肢  復旧 再建 建物・敷地の売却
区分所有者の人数及び議決権の5分の4以上の多数決で決議
敷地売却の場合は敷地共有者の議決権の5分の4以上の多数決も必要

法務省 改正被災マンション法

災害に弱いマンションは、旧耐震基準で設計されている可能性が高くなります。ということは、築40年近い物件となり、高齢者世帯の割合が多くなっています。復旧や再建には、多額の費用がかかります。しかし高齢者世帯が追加資金を拠出するのはなかなか困難です。

区分所有者が追加で資金を拠出しなければ建替が不可能な場合、建替よりは敷地の売却が選択されるのではないでしょうか。

しかし敷地共有者の議決権の5分の4以上の賛成が必要です。これもなかなかハードルが高いです。全壊で居住不能の場合の方が、すんなりと話がまとまります。中途半端に住める状態だと紛糾します。

マンションの管理組合の役員というものは、一度経験すればわかりますが、苦労ばかりが重なるもので、報われることがほとんどありません。敷地売却決議のための総会なんて紛糾するのは目に見えています。

建替や敷地売却等の重大決議を取りまとめるのはかなりの労力と能力が必要になります。

売却を選択したとしても、都心の一等地か、駅近物件以外は、かなり叩かれます。容積率に余裕のない場合、そもそも買い手を見つけるのが大変です。うまく買い手が見つかって、売却代金が分配されたとしても、分配額は敷地の持ち分相当分なので、マンションの場合、一部屋あたり10~20㎡ぐらいです。近辺の土地の坪単価×マンション用地としての上乗せ分×5坪程度が入ってくるだけです。4千万円で買ったマンションが、地震で全部滅失となり、敷地を売却したら、手元に残ったのは、敷地の売却代金1千万円とローンだけということもありえます(保険は考慮してません)。

icon-check-square 個人債務者の私的整理に関するガイドライン

東日本大震災以後、「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」(被災ローン減免制度)を利用すれば、破産手続きなどの法的な手続きによらずに一定の要件の下、震災前に借り入れた債務の減免を受けることができるようになりました。しかし、あくまで私的整理であり金融機関との個別交渉が必要です。

東京、名古屋、大阪等の大都市で直下型地震が発生し、マンションが軒並み全壊した場合、私的整理による債務減免が一律適用されると金融機関も破綻します。こういう制度もあるけども、実際に適用されるかどうかはやってみないとわからないという、まるで助成金のようなものです。

マンションの所有者は建物が無くなったら、敷地部分の5坪ぐらいしか土地を保有していないということは頭に入れておくべきでしょう。