中小企業における事業承継等においてよく活用される「配当優先の無議決権株式」「拒否権付株式」を相続により承継した場合、株式の評価の方法は以下のようになります。
配当優先株式の評価
・類似業種比準方式による場合
比準要素のうち「1株当たりの配当金額」は株式の種類ごとに計算します。
・純資産価額方式による場合
配当優先の有無にかかわらず、純資産価額の定めにより評価します。
無議決権株式の評価
・同族株主が、無議決権株式を相続又は遺贈により取得した場合、まずは議決権の有無にかかわらず評価します。
以下の条件を満たすとき調整計算を実施します。
- 評価すべき会社の株式について、相続税の法定申告期限までに、遺産分割協議が確定していること
- 相続又は遺贈により、その会社の株式を取得したすべての同族株主から、相続税の法定申告期限までに、「無議決権の評価の取扱いに係る選択届出書」が所轄税務署長に提出されていること
- 評価明細書に、調整計算の算式に基づく無議決権株式及び議決権のある株式の評価額の算定根拠を記載し添付していること
調整計算の算式
調整計算前の無議決権株式の1 株当たりの評価額×0.95=無議決権殊式の評価額(単価)
調整計算前の無議決権株式の1 株当たりの評価額×無議決権株式の株式総数×0.05=議決権のある株式への加算額
(調整計算前の議決権のある株式の1 株当たりの評価額×議決権のある株式の株式総数)+議決権のある株式への加算額=議決権のある株式の評価額
議決権のある株式の評価額÷議決権のある株式の株式総数=議決権のある株式の評価額(単価)
拒否権付株式の評価
拒否権を考慮せず普通株式と同様に評価します。
調整計算をすることにより、無議決権株式については評価減が可能となりますが、減額分が議決権のある株式に加算されますので、株式全体としての評価額は変わりません。議決権の有無については、会社法上は大きな影響力の違いがありますが、税務上は5%の評価減としかなりません。