一時は飛ぶように売れたタワーマンションも、最近売れ行きに陰りが見えてきた気がします。
以前は竣工の1年前には、物件のホームページに「完売御礼」と出て、実質的に閉鎖状態だったのですが、最近は竣工半年前でもまだまだホームページは閉鎖されておりません。そして完成した途端に、不動産情報サイトに数件の「完成在庫」が掲載されています。
竣工までに売り切らないと、デベロッパーは資金繰りに支障をきたします。このマイナス金利の異常な状況で売り切れなかったら、金利が高騰するとリーマンショックの再来になり、またマンションデベロッパーがいくつか倒れてしまいます。
大阪市内でも駐車場や古いビルが取り壊されたあと、タワーマンションの「建築計画のお知らせ」が掲示されている更地が多々ありますが、この状況じゃちょっと様子見じゃないでしょうか。
イケイケドンドンだったタワーマンションの販売に水を差した要因の一つが「総務省と国税庁がタワーマンション等のマンションを利用した相続税対策への課税強化の検討に入った」という報道でした。節税対策が行き過ぎると、だいたい数年後には、「節税対策への対策」が打たれるのですが、今回も予想通り国は動きました。
総務省=固定資産税なので、固定資産税も課税強化となります。
このような報道がされるだけで、タワーマンションのホームページからは「節税対策に最適」という文言は消え去ってしまいました。
具体的な評価基準としてどのような方法が適用されるかは、まだ不明ですが、基準階を決めて階数によって一定の倍率を乗する等になるのではと言われています。マンション等の区分所有権建物は土地部分の持ち分面積はわずかで、一戸当たりせいぜい5坪もあればいい方なので、建物部分の評価額を調整することになると思われます。
1億円の市場価値がある高層階の物件が、相続税法上は3千万円と評価されるような現状の計算方法に対しては見直しが図られ、市場価格の6~7割ぐらいになると考えられます。
現金で1億円を持つよりは、相続税法上の評価額は下がりますが、タワーマンション以外の不動産と同程度の節税効果しか発揮することができず、それなら土地のある一戸建ての方がいいやということになって、節税対策の対象としての優位性はなくなるでしょう。
そうすると、実際に自分が住むのではなく、タワーマンションを投資対象として購入する場合、結局は賃貸に回した場合にどれだけキャッシュが残るかという利回りを重視することになります。実際は、固定資産税や管理費、修繕積立金の高いタワーマンションは利回りがあまりよくありません。賃貸に回すとしても、タワーマンションが増えてくると、借リ手の選択肢も増えて、また高層階の家賃を支払える層も限られており、競争激化となり賃料は下落していきます。
不動産所得で赤字を出して、他の所得と通算して節税を図ることを目的とする投資家以外は、なかなか手を出しにくくなるでしょう。富裕層はそんなチマチマしたことは気にせず購入しますが、その富裕層も数は限定されます。海外の投資家においても、日本の場合、固定資産を購入したからと言って、長期滞在ビザが取りやすいということはないので、結局は利回りを重視します。
しかし、タワーマンションの最大のセールスポイントは立地にあります。タワーマンションは容積率が高い場所にしか建てることができないので、ほとんどが大通りに面した便利な場所にあります。たまにある駅直結物件は雨にも濡れずに、電車に乗れます。利便性を考慮すると、タワーマンションの低層階は他の中低層物件と比較して、さほど高くなく、さらにこれから固定資産税評価額が基準階よりも低減されるのならば、逆に人気が出るのではないでしょうか。
高所恐怖症の私は、タワーマンションの高層階はとても怖くて住めません。何度か行ったことがあって、眺めは最高なんですが、下を見た途端、目まいがします。もし住めたとしても低層階ですが、高所への恐怖と別に、巷でよく言われるタワーマンションヒエラルキーへの恐怖からエレベータを使わずに階段を使いそうです。そうすると足腰が鍛えられて一石二鳥ですね。