税務関係書類、特に領収証や請求書の証憑をまとめたファイルを保存する場所を確保するために、経理部の方は頭を悩ませます。
税務調査の対象期間中は保存しなければならず、捨てるわけにはいきません。
何でも電子化のこの時代、文書での保存も時代遅れだろうということで、電子帳簿保存法が施行されていましたが、要件が非常に厳しく、導入しているのは一部の事業者のみでした。
平成28年度の税制改正により、スキャナ保存の要件のうち一部が改正されました。
スキャナについて、「『原稿台と一体型』に限る」要件を廃止
スキャナについては、「原稿台とー体型のスキャナに限る」という要件が廃止されました。
領収書等の受領者等が読み取る場合の要件を整備
領収書や請求書等について、その受領者や作成者が読み取る場合、受領等後、その者が署名の上、3日以内にタイムスタンプを付すことか要件とされました。読み取る国税関係書類の大きさがA4以下であるときは、大きさに関する情報の保存が不要とされました。
小規模企業者の特例
保存義務者は、いわゆる適正事務処理要件(①相互牽制、②定期的なチェック、③再発防止策)に関して、事務手続や規程を整備するとともに、これらに基づいた事務処理を行う必要があります。例えばスキャナ文書保存規程等の整備が必要になります。
保存義務者が小規模企業者の場合で、②の「定期的なチェック」を税務代理人が行うときは、①の「相互牽制」の要件については不要となりました。
小規模事業者
「おおむね常時使用する従業員の数が20人(商業又はサービス業に属する事業を主たる事業として営む者については、5人)以下の事業者をいう。」
⇒ このような小規模事業者は、わざわざスキャナで保存しなくても、従来の方法で保存した方が低コストだと思われます。
スキャナ保存要件
実際に導入するには、いくつかの要件を満たさなければなりませんが、特にハードルが高いと思われるものを列挙しました。
真実性の確保要件
入力期間の制限
【早期入力方式】
国税関係害類に係る記録事項の入力をその受領等後、速やか(1週間以内)に行うこと
【業務処理サイクル方式】
国税関係書類に係る記録事項の入力をその業務の処理に係る通常の期間(1か月以内)を経過した後、速やかに(1週間以内)に行うこと
※国税関係書類の受領等から入力までの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る
タイムスタンプの付与
一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプを、一の入力単位ごとの電磁的記録の記録事項に付すこと
※国税関係書類の受領者等が読み取る場合は、受領等後、受領者等か署名の上、特に速やか(3日以内)にタイムスタンプを付すこと
ヴァージョン管理
国税関係書類の記録事項について訂正又は削除を行った場合には.これらの事実及ぴ内容を確認することかできる電子計算処理システムを要すること
可視性の確保要件
検索機能の確保
電磁的記録の記録事項について、次の要件による検索ができるようにすること
- 取引年月日その他の日付、取引金額その他主要な記録項目での検索
- 日付又は金額に係る記録頂目について範囲を指定しての検索
- 2以上の任意の記録項目を組み合わせての検索
上記要件を満たすには、自社で画像保存のデータベースを構築できる事業者以外は、対応システムを導入するしかありません。
さらに会計システムとの連動が必須となります。
Q&Aで細かく要件の可否が説明されています。
導入するには、タイムスタンプサービスを提供している認定事業者のサービス及びシステムを利用するのが、一番手っ取り早いということになります。
当然付加サービスとなるので、毎年国税関係書類がトラックいっぱいになるような事業者であれば、保管料や廃棄費用、人件費などを考慮しても導入するメリットがあるでしょう。
毎年、税務関係書類がA4のファイル10冊程度であれば、規程や業務フローを整備し、システムを導入するコストを考えれば、現状での紙での保存の方がメリットがあります。
中規模以上の企業においては、電子申告と同様に、徐々に普及していくものと予測されます。
税務調査の際に画像データを一式提供しても問題なく、業務フローが既に確立している事業者においては、導入も容易でしょう。