消費税率10%の導入は見送られましたが、軽減税率の導入に対する合わせ技でついにインボイス方式(適格請求書等保存方式)の導入が検討されるに至りました。
インボイス方式が本格的に導入されると、簡単に言うと、消費税を支払っていない事業者は消費税を請求書に上乗せすることが実質的に困難となります。
現状の制度では課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は納税の義務が免除されます。請求書には消費税を上乗せしていても、免除事業者は消費税を支払っていませんでした。しかし免除事業者に対して、経費などを支払っていた事業者は、免除事業者に対して支払った場合でも課税仕入として認識できました。
インボイス方式(適格請求書等保存方式)が導入されると以下のようになります。
「適格請求書発行事業者」から交付を受けた「適格請求書」又は「適格簡易請求書」の保存を、仕入税額控除の要件とする。
適格請求書発行事業者登録制度を創設し、原則として要するに「適格請求書発行事業者」からの請求書しか仕入税額控除の対象とならず、「適格請求書発行事業者」以外の事業者の請求書に関しては、消費税の実務においては、別途区分処理をしなければならないということになります。会計システムでは新たな消費税コードが設定されることでしょう(例えば非適格仕入れとか?)。
登録を受けた事業者とする。
「適格請求書発行事業者」とは、免税事業者以外の事業者であって、納税地を所轄する税務署長に申請書を提出し、適格請求書を交付することのできる事業者としてそして、「適格請求書発行事業者」の氏名又は名称及び登録番号等については、インターネットを通じて登録後速やかに公表するものとする。
現状の法人番号公表サイトのようなサイトが設置されるのでしょうか。請求書に消費税が上乗せしている事業者が怪しい時は、ネットですぐに検索して「適格請求書発行事業者」かどうかを確認できることになります。そのような事業者に対しては、仕入税額控除の対象とならないので、支払い側としては、消費税分を払いたくないということになるでしょう。
類似するもの及び適格請求書の記載事項に係る電磁的記録に類似するもの(以下「適格請求書類似書類等」という。)の交付及び提供を禁止し、類似書類等の交付又は提供に関する調査に係る質問検査権の規定を整備する。また適格請求書類似書類等を交付又は提供した者に対する罰則を設ける。
適格請求書又は適格簡易請求書に適格請求書っぽい「適格請求書類似書類等」を交付したものに対しては、罰則が設けられます。ちゃんと「適格請求書発行事業者」が交付した「適格請求書」又は「適格簡易請求書」しか認めませんということです。怪しい「適格請求書類似書類等」を交付すると、交付側の責任となります。
「適格請求書発行事業者」がネットでの公表によりすぐに確認されるので、登録をしていない事業者は消費税額を付加することは徐々にできなくなるでしょう。
消費税導入以来の大きな制度変更となるため、当然経過措置が設けられています。経過措置の対象期間が平成39年3月31日まで(11年後!)となっていたのですが、消費税10%導入の延期に伴い、変更される可能性があります。
ともあれ、次の申年の頃には、すっかりインボイス方式が根付いているに違いありません。その頃には消費税が20%ぐらいになっているかも知れませんが。