被相続人の居住用家屋に係る譲渡所得の特別控除制度の特例の創設
(空き家の売却による所得控除)
増え続ける空き家対策の一環として、平成28年度において被相続人の居住用家屋に係る譲渡所得の特別控除制度の特例が創設されました。
対象となる家屋等
相続又は遺贈による被相続人居住用家屋
当該相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋であって、昭和56年5月31日以前に建築されたこと
当該相続の開始の直前において当該被相続人以外に居住をしていた者がいなかったこと等の要件を満たすもの
※親から、親が実際に住んでいた家を相続した場合等が該当します。相続の開始直前において、被相続人以外に居住をしていた者がいなかったということは独居世帯であったことが必要となります。相続人自身は相続後に住んでいる必要がありません。というか住んでいたら対象外となります。
※昭和56年5月31日以前に建築されたものが対象なので、平成28年度からだと築35年以上の物件となります。実際に取得しても、リフォームするか建替えるかの対象となる物件ですね。
被相続人居住用家屋の敷地等
当該相続の開始の直前において当該被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地等
対象者
上記対象となる家屋、家屋の敷地の取得をした個人
期間
平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間
※とりあえず、2年9か月です。
要件
当該相続の開始があった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間にしたものに限る
譲渡の対価の額が1億円を超えるもの等を除く
※高額物件は対象外です。特例の対象となる居住用家屋の市場価格はほぼゼロに等しいので、実際には土地のみの価格となるでしょう。路線価ベースで20万円以上の土地であれば、60~70坪が目安でしょうか。
居住用家屋及びその敷地の場合
イ 当該相続の時から当該譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと
ロ 当該譲渡の時において地震に対する安全性に係る規定又は基準に適合するものであること
※新耐震基準は昭和56年6月以降に建築確認を取った建物に適用されています。したがって対象は旧耐震基準で設計された建物となります。
居住用家屋を取壊した後の敷地等の場合
イ 当該相続の時から当該取壊し等の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと
ロ 当該相続の時から当該譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと
ハ 当該取壊し等の時から当該譲渡の時まで建物又は構築物の敷地の用に供されていたことがないこと
特例の内容
居住用財産を譲渡した場合に該当するものとみなして、居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除を適用できる
※譲渡所得から3,000万円を控除できます。
他の相続財産に係る譲渡所得の課税の特例との選択適用とされます。
市区町村長の当該被相続人居住用家屋及び当該被相続人居住用家屋の敷地等が上記要件を満たすことの確認をした旨を記載した書類その他の書類の添付が必要となります。
対象はかなり限定されている
対象となる物件は限定(昭和56年5月31日以前に建築されたもの)されますが、相続した物件が昭和56年5月31日以前に建築されたもので、おそらく近親者は誰も住まないだろう、また賃貸に出すのも手間だからこの際、売却してしまおうと思った場合は、この特例の利用を検討すればいいでしょう。
例えば、母が一人暮らしをしていた実家を相続したものの、遠方なのでメンテナンスもできず、誰か親族が住むこともないし、貸すのも結構手間がかかるような物件について、不動産屋さんに相談したらそれなりの価格で売れそうな物件だとわかったとします。この特例を適用すれば、売却益が3,000万円までなら、譲渡所得はゼロとなり課税されません。
そもそも放置されている物件というのは買手がないか、売却するまでのハードルが高い(所有者が特定できない、または交渉相手が一本化できない等)のがほとんどなのです。
特例の適用期間も限定されている(相続の開始があった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間にしたものに限る)ので、相続をしたならばすぐに動く必要があります。ちょっとでも居住や賃貸の期間があれば対象となりません。
バブルの時の評価額や売買事例はきれいさっぱり忘れて、現実的な値付けをして、さっさと売り抜けることが肝心です。